Portrait of Masumi Tajima, Representative Director

ホテルという場は、単に宿泊を提供する場所ではなく、人と人、文化と文化をつなぐ「出会いの場」である――私は長年、ホテルコンシェルジュとして現場に立つ中で、そのことを強く実感してきました。その中心にいるのがコンシェルジュです。言葉や文化、価値観の異なるゲストと向き合いながら、一人ひとりの滞在を支え、日本という国の印象を形づくる。その役割は、決して表に出ることは多くありませんが、非常に責任の重い専門職だと考えています。

一方で、日本のホテル業界に目を向けると、運営全体に関する教育システムは整備されているものの、コンシェルジュに特化した体系的な育成の場は、これまで十分に用意されてきませんでした。現場では「経験を積んでから一人前になる」ことが前提とされ、学びの多くはOJTに委ねられています。先輩の背中を見て学ぶことは尊い学びではありますが、その方法だけでは、学びが属人的になり、確実に次の世代へと継承していくことが難しいと感じてきました。

特に、国籍や文化、宗教、価値観が急速に多様化する現代において、経験だけに頼る育成には限界があります。求められるのは、単なる知識や情報量ではなく、状況を読み取り、相手の立場に立って考え、最適な選択を導き出す力です。その力は、偶然の経験だけで身につくものではなく、学びとして整理され、磨かれていく必要があります。

だからこそ私は、志ある人が安心して学び、段階的に成長できる環境を、日本にも整えるべきだと考えるようになりました。個人の努力や現場任せにするのではなく、「学びとしてのコンシェルジュ教育」を社会の中にきちんと位置づけること――それが、今まさに求められていることだと感じています。

現在、私は指導者として、次の世代に何を残せるのかを日々問い続けています。現場で培ってきた経験を、そのまま個人の中に留めるのではなく、言語化し、共有し、再現可能な形で伝えていくこと。それは決して理論だけを教える教育ではありません。現場で本当に役立つ実践知を、未来へと手渡していくための作業です。

本スクールは、コンシェルジュを目指す人、現場で悩みながらも成長しようとする人、そして人を育てたいと願う業界の皆様が交わる「学びのプラットフォーム」でありたいと考えています。

ここから、日本のコンシェルジュ教育の新しい一歩が始まり、次の世代へと確かにつながっていくことを、心から願っています。

一般社団法人ホテルコンシェルジュ協会 
理事長 田隝 益美

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